暇人のオーディオ

暇人が久々にオーディオを再開します。どのくらい続くでしょうか?

2022年11月

オーディオ機器の予算配分

オーディオ機器を購入するにあたってその予算配分をどうするかについては昔からさまざまな議論があるところだが、ある程度この世界に足を踏み入れたことのある御仁なら皆それなりに一家言持っているようで、ネットで検索するといろいろなページで多種多様の意見が開陳されている様子が面白い。最近はソースとしてのCDの占める地位の低下のせいか、入力側をCDPとするかDACとするかでも多少比率は異なるようだが、それぞれの意見を集約するとおおむね二つに分かれるようで、ひとつはスピーカーに最も予算を配分すべしとするものと、もう一つはアンプにこそ予算を集中するべきというもの。そのほかに部屋派や電源およびケーブルなどのアクセサリー派、なんていう意見もあるようだが、数の上ではやはりスピーカー重視派とアンプ重視派が多数を占める印象である。スピーカー重視派の言い分としては、オーディオにおいて求める音の性格を決める上で最も重要な役割を演じているはスピーカーであって、他の機器にいくら予算をかけても低予算のスピーカーでは求める音に近づくことはできない、というもので、たしかに奏でる音の性格を決定づける上でのスピーカーの役割はかなり大きいと思われるし、システムを組む上での動機付けとしては、”このスピーカーを鳴らすにはどういう組み合わせになるか” という発想からアプローチすることが多いようにも思える。翻ってアンプ派の意見を聞いてみると、どんなにいいスピーカーを買ったとしても、それを鳴らすアンプのドライブ力がなければそのスピーカーの能力を発揮させることができないので、低予算のアンプではスピーカーを鳴らす力が充分に得られず、せっかく予算をかけたスピーカーも宝の持ち腐れになる、ということのようで、ついこの間の試聴で、自分の持っているL-550AXIIでは805D4を全く鳴らしきれておらず、もし導入してもアンプの買い替えは必須だな、と思った経験からも深く頷くことのできる意見である。ではどちらが正しいのであろうか、という議論には、趣味性が高くまたそれぞれの嗜好もかなり異なる背景があるのだから、正解はない、というのがひとつの結論ではあろう。ただ、あくまで少ない経験に基づく推測ではあるのだが、自分なりの結論を出すための目安として、機器の価格帯の問題、というのは考慮に入れる価値があるかもしれないと思う。比較的安価な価格帯、例えば今まで愛用していたCM8を考えた場合、L-510(定価はCM8ペアの半分強)と、価格的にはその約2.5倍となるL-550AXIIでは、そのドライブ力にさほどの差は感じられず、むしろそれぞれのキャラクターの違いを楽しめるような余地が残されていたのに対し、やや高額な価格帯と考えられる805D4の場合は、約三分の一強の価格であるL-550AXIIで再生した場合の力不足は明らかで、ネット上でよくお見受けする諸氏が楽しんでおられるような超高級プリメインやセパレートアンプ等によるドライブで得られる境地とは全く異なるものであろうことは想像に難くない。どのあたりにその境界線が引かれているのかは不明だが、スピーカーの価格帯が上がっていくにつれて、ドライブするアンプの重要性が増していって、その比率が近づいていく、ないしは逆転するようなこともあるのではないか、と思われる。実際に自分で試したわけではないから本当のところはわからないけどね。っていうか、お金がありません(苦笑)。ちなみに現在の自分のシステムの価格比率は SP:AMP:CDP:ラック、ケーブル類 でだいたい 2:1:1:0.5 となっていて、特に意識したわけではないのだが、この議論でいうとスピーカー重視型の予算配分になっている。購入はアンプ、CDP、スピーカーの順番になったが、最後のスピーカー購入については、以前の試聴で、現在のアンプで充分にこのスピーカーをドライブできるだろうという感触を得たのが大きな決め手になった。現在のところ、手前味噌ではあるが、このシステムが奏でる音のバランスはとても良いように聴こえる。とりあえず、”その先” の世界へ想いを馳せるのはもう少しあとのことにして、今は新しく仲間になった702 signatureの響きを楽しんでいきましょうか。

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コンティニュアムコーンとケブラーコーン

スピーカーはもうかれこれ20年くらい前からB&Wを使っていて、旧705、CM8、ときて現在の702 signatureで3代目になる。それぞれの買い替えの直接、間接のきっかけがすべて地震であることについては、ふと何かの拍子に振り返るとなんとも複雑な気持ちになるが、そういう時の流れの中でずっと聴き続けてきたB&Wの音の魅力とは、”美しいリアリティ” という表現がしっくりくるなあ、と、以前から考えていた。美音系に分類されることはないはずのB&Wではあるが、セッティングをきちんと行って鳴らすことができた瞬間に現出する音楽のえも言われぬ美しさは競合する他の製品の追随を許さない世界があるように思える。まあそんなふうに自分にとって思い入れのあるB&Wのスピーカーだが、今までの旧705、CM8でずっと気になっていたのは、どちらも弦のトゥッティの強奏部分で音がやや潰れてしまって、ともすれば歪んでいるように聞こえてくることがある、という現象であった。アンプがそれこそ40年選手のL-510だった頃は、その劣化のせいかしら、と真剣に悩んだこともあるが、L-550AXIIに代わった後もやはりこの現象は顔を出し続け、どうもアンプが原因ではないらしい。ところが今回、702 signatureになってみると、そういうことはほとんどなく、オケのフォルテッシモの描き分けが微細で美しい。この違いはなんだろうか、と考えると、もちろん単純にスピーカーのグレードのせいかもしれないが、前2者でミッドレンジに用いられるケブラーコーンと後者のコンティニュアムコーンの違いではないか、という推論に至る。ネットで検索するとこのケブラーコーンやコンティニュアムコーンについては賛否取り混ぜてさまざまな評価があるようだが、とりあえず同じメーカーのスピーカーを聴き続けてきた自分にとって、今回の702 signatureが奏でる弦合奏の響きは、充分に満足を感じることのできるものとなっている。コンティニュアムコーンによってより進化した ”美しいリアリティ” とともに更けゆく晩秋の夜長。アッカルドのブルッフが美しい。

コンティニュアムコーン
 
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