かつて一時的に時の人となった”佐村河内守”の作品集を久しぶりに聴いてみた。2012年発売の室内楽曲集。当時はまだ”レコード芸術”を定期的に購読していて、サンプルCDを参考にいろいろ購入して聴き漁っていたが、その中の1枚だと思う。2011年発売の交響曲”HIROSHIMA”も同誌で知り保有しているが、震災の影響がまだ残るリスニングルームで聴いたうねるような陰鬱な響きは、当時の時代の気分と妙に合致していたような気がする。時を経て作曲者をめぐる様々なストーリーの虚構が全て明らかとなった今聴いても、自分にとってはこれらは美しい楽曲として響くようだ。録音も素晴らしく、ホールトーンを適度に残しながらくっきりとした定位で演奏を描き出す。自分は音楽の素養は全くないので、様式などのきちんとしたアナリーゼはできないのだが、当時これを演奏したプロの演奏家たちは、どういう想いでこれを録音したのだろうか。結局この”佐村河内守”を冠したこの録音のどこからどこまでが虚構であるのかはよくわからないのだが、こうして聴いてみると、その虚構性を超えて、自分には”それっぽく”響く。今後もたまに聴いてみるのもいいかもしれない。

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