先日とても久しぶりにコンサートに出かけた。気鋭のヴァイオリニスト、服部萌音のリサイタル。プログラムはブラームスから始まってサン・サーンス、ラヴェル、ストラヴィンスキー、シマノフスキーなど多岐にわたるかなり重量級の構成で、本人もかなり大変だとコメントしていたが、その演奏は圧巻の一言。1曲目のブラームスでは今ひとつ楽器がうまく鳴っていないような印象でやや苦労している気配が感じられたが、次のサン・サーンスからはもう彼女独自の世界が展開されて引き込まれる。Wikipediaによると使用楽器はガルネリらしいが、骨太でしっかりとした芯の強い、それでいてしっとりとした柔らかな艶も伴う蠱惑的な音色と、時には激しいまでの情熱につき動かされているかのような超絶技巧でホールを満たして聴衆を魅了していた。演奏の合間に自分で楽曲の解説もこなしていたのだが、その時間では大人びた演奏でみせるものとは対照的な年若いお嬢さんの可憐な表情を垣間見ることができてこれもたいへん魅力的。今回は招待だったのでほぼ予備知識なしで出かけたのだが、いい意味で予想を完全に裏切られた。アンコールの3つのオレンジの恋とペトルーシュカも含めて、本当に心から楽しめる演奏会だったと思う。いつもはほとんどこういうことはしないのだが、終了後思わず会場で販売していた彼女のCDを2枚ほど購入して帰宅。今日聴いているのはその中の1枚で、2016年録音のショスタコーヴィッチのコンチェルト。6年前だから当時の年齢はまだ15、6歳くらいのようだが、先の演奏会で聴いたあの音色がまた眼前で拡がって、この頃から既に確たる自分の”音”を持っていることに驚かされる。この子、すげえな。録音も適度なホールトーンを含む定位感のしっかりとしたもので、聴きはじめから安心して音楽に浸ることができる。併録されているワックスマンの”カルメン・ファンタジー”も、ウィットに富む演奏で楽しめた。ライブで鑑賞する緊張感もいいし、こうして自宅で気軽に聴けるのもまた、いい。やっぱり音楽っていいな。

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